★ メキシコ文化にふれる(サン・ルイス・ポトシ州の州都)  
                                       
JECK会員 工藤眞也

5、
飲料水の問題点

メキシコの全ての州で、飲料水はポリタンクで購入されている。地下水を浄化し18Lのポリ瓶(ガラフォンと称する)詰めで販売され、価格は15~17ペソ(180円~200円)で地域によって異なる。
 ガラフォンの水は地下水源であることが多いので、一般的には日本の水道水より美味であるが、製造工場の品質管理上信頼性にかけるものもみられるので、手放しで安心できないところもある。
基本的に一般家庭の蛇口から出る水道水は直接飲めないと考えるべきである。日本の上水道のように各家庭への給水管が整備されていない所が多いので、汚水による汚濁の危険性がある。

又、地域によってフッ素の含有量の高い(7ppm)水道水もあるので、食器洗浄、洗濯、シャワー程度にとどめるべきで口に含む事はさけた方が無難である。
ポリタンクの購入水は、メーカーさえ確りしておれば安心して飲むことができる。
 様々なメーカーがあるので多少高くても品質管理のしっかりとした大手メーカー製品をお薦めする。実は数社の製品の水質分析を実施したことがあるが、あるメーカーの製品に数千個/100mlの大腸菌を検出したことがある。

一般家庭では水道水は飲まない(サン・ルイシ・ポトシ市)

通常、メキシコの給水配管は施工方法や配管材質に問題があり、高圧で給水出来ない事情がある。従って浄水場からの給水は一気に高い建物に押し上げる事ができず、全ての家庭では一旦地下水槽にプールする。ちなみに、衛生上の問題から日本では飲料水の地下貯留は許可になっていない。

この地下水槽が殆ど衛生上の管理がされておらず、蓋を開けるとボーフラが飛び上がってくる家庭が多い。その上構造的にも雨水対策が希薄であり、特に集中豪雨型のメキシコでは濁流が混入する可能性もある。其の上、地下タンクには施錠の規則も習慣もなく、誰でも簡単に開ける事ができるので、防災上の危険をも孕んでいる。

地下貯水槽に簡単な鉄蓋のみがかけてある。    水槽のピットに雨水流入防止対策が無い。











更に、この地下タンクから屋根上の貯水タンクに送られるが、貯水タンクの管理もずさんなところが多く、鳥や小動物の死骸が沈んでいる可能性があるので油断できない。行政による管理や指導が必要である。(日本でもつい数年前、同様な事故が社会問題になり改善ざれた経緯がある。)

6、都市と田舎の上水施設の比較

  

都市には近代的な上水場が管理されている。     住民数千人の田舎町の上水プラント

都市の上水場では水質は管理され塩素滅菌も行われているが、給水管の不備から一般市民が安心して飲める状態で供給されていないので、直接生水として飲む家庭は少ない。右上写真のプラントはワステカ地方に設置されているのが、この地区の人々は都市のような贅沢?は言っておられないようで、河川水をくみ上げ凝集沈殿処理と殺菌処理で飲料用として供給している。もっとも地方では浄化装置のあるのは良い方で、河川水を汲み上げて貯水タンクと簡単な滅菌処理で各家庭に給水しているところもある(写真左下)

(ビン詰め工場)
ビン詰めされた市販の水は100%信頼出来るのだろうか? 飲料水製造工場を視察したことがあるが、回収したビン洗浄工程のずさんな衛生管理に驚かされたことがある。右下写真は飲料水ビン詰め小規模工場である。

リサイクル瓶の洗浄があまりにも無神経な工程に、呆れて見入る州調査員の様子が印象的であった。写真の右端にいる青い服の男性が調査員であるが、彼は工場を出た後自分のお腹を、両手で抱え「腹が痛くなってきた!」と大げさな演技をしてみせ「我々はこんな水を飲まされてきたのか!」と肩をすぼめていた。お腹に自信ない方は、やはり大手メーカーの製品を選択すべきだろう。

(世界の水問題)

 “水”では先進国と言われている日本も含め、欧米の飲料水もまだまだ問題を抱えていることを自覚しなければならない。間違いなく我々の生活は環境を汚染しており、自浄浄化の環境対策は万全と言える状況にあると言えないことを自覚しなくてはならない。途上国の指導も地球全体の問題として取り組むべく当然の課題ではあるが、自達の足元も見てみよう。癌は何故、特定の人、特定の地域に発生するのだろうか?現代男性の精子の数は本当に減少の傾向にあるのだろうか?河川に生息する魚類の生殖能力は本当に低下しているのか?水道水に添加されている塩素の問題や、環境ホルモンの問題は大丈夫なのか?等・・・

7、日常生活に防犯の意識

外観はブッロク作りの四角い構造であり、隣家とは日本のように分離されていないところが多く境目がない。基本的に正面は高い塀でガードされ、正面から家屋の構造を伺えない。又、最近のアパート(デパルトメント)は入り口のセキュリテーがしっかりと確保されているうえ、更に各個人の部屋には二重の鍵がついている。しかし、裏を返せばセキュリテーが完備していると言う事は、日常の安全は各自で確保しなければならない環境であることを意味する。

住宅街の家々は外観の見てくれよりも防犯に力点が置かれ、石造りのこともあって物々しい家屋に見える。


比較的裕福な住人の家屋        銀行は必ず銃を携帯した警備員がガードに立つ

つい数年前のことであるが首都メキシコ・シテイの郊外には24時間営業のスーパーがなく、通常午前10時までは直接店内に入る事ができず、鉄格子越しに品物の受け渡しをしていた。

各銀行の前には防弾チョッキを着たポリスやガードマンがショットガンをかまえている姿は日本人には異様に感じる。一つの判断基準となるが、サン・ルイス・ポトシ州には数箇所の24時間営業のスーパーがあることから、首都メキシコ・シテイに比べ安全であると言う証明になるであろう。
  前述のように日本と比べると異常な緊張感のある環境ではあるが、常に危険にさらされていると言う分けではない。知らない所を夜遅くまでうろうろしないとか、大金を持ち歩かないとか、道端で財布を広げないとか、スーパーのレジで高額のお札を出さないとか、此処は日本では無いのだから警察を頭から信頼しないとか、事務所の机にも必ず施錠するとか、日本に住んで居た時よりも少し緊張感を持つことで大きな事故を避けることができると思う。

(メキシコの通貨事情) ・通貨の写真は石田ユカリ;クエルナバカの青い空からお借りしました。

  

通貨に関するお話をしよう。メキシコのお札は20ペソ、50ペソ、100ペソ、200ペソ、500ペソであるが、市場やスーパーで間違っても500ペソを出してはいけない。特に着任間もないこともあり言葉の不自由な年配者と言うハンディから、つり銭のトラブルに巻き込まれた例をみたことがある。

慌てて応援に駆けつけたが、”500ペソだ!200ペソだった”の水掛け論で結局解決しなかった。

少し横道にそれるが、スーパーで100ペソ紙幣を出すと、お客の目の前で日にかざして透かしを確認する。始めのころは失礼な振る舞いに思わずムッとしたが、慣れてくると腹もたたなくなってくる。どうも透かしの確認だけでなく傷が少しでもあると受け取れないようであり、見落とすと上司からキツイ叱責があるようだ。私も何度かお店で傷物のお札を拒絶され、しかたなく銀行に持ち込んで交換してもらった経験がある。

何か事情があったのかも知れないが、日常200ペソ紙幣を使う機会がなかったので空港で使おうと思い紙幣を差し出したところ、受け取ってもらえなかったことがあった。高額紙幣は銀行(バンコ)か、両替所(カサ・デ・カンビオ)で、前もって小額紙幣に換えておく必要がある。

以上の事情を知っておれば、ス-パ-で500ペソを使おうとすることは如何に無謀で、非常識であるかと言うことが理解できるだろう。多分レジ係も生まれてはじめて500ペソ紙幣にお目にかかったことであり面食らった事と思う。まして、スペイン語会話の不自由な日本人が相手では、犯罪を誘発してしまったとも言え、お互い大変不幸な事件だったと言える。

サン・ルイス・ポトシ市最大級のスーパー・マーケット

(紙幣はメキシコの歴史を語る)

“クエルナバカの青い空”から高額紙幣についての一文をお借りする。

500ペソ: 表のデザインは、プエブラの戦いの場面と指揮官イグナシオ・サラゴサ 将軍GENERAL IGNACIO ZARAGOZAです。1862年にフランス人がメキシコに侵略した時に、小さな軍隊を率いて、遥かに大軍のフランス軍を倒したことで、一躍英雄となりました。戦いがあった55日は、プエブラの戦いBATALLA DE PUEBLAの日として国民の祝日となっていますし、5 DE MAYOという名前の通りも各地にあります。お札の裏には、プエブラ市のカテドラルが描かれています。短い滞在では見る機会の少ない高額紙幣です。
  200ペソ: メキシコの17世紀の女流詩人ソル・フアナSOR JUANA INES DE LA CRUZが描かれています。17世紀はスペイン植民地における文学の黄金時代と言われ、スペイン本国でも出版された作品も少なくありません。ソル・フアナは、4歳から文字を覚えて文学に目覚め、創作活動に没頭するために尼僧になった人です。ソネトと呼ばれる14行詩で、韻を踏んだ美しい作品が今も読まれています。当時流行の疫病に罹った仲間の尼僧を看病するうち、自分も病に倒れ、43歳で亡くなりました。最近、謎の生涯に迫る伝記などが出版されて話題になっています。お札の裏には、ソル・フアナにゆかりのサン・ヘロニモ寺院TEMPLO DE SAN JERONIMOが描かれています。
200ペソ札はスーパーでまとめ買いする時やレストランで食事をした時以外は、あまり使わない紙幣です。

(石田ユカリ記