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読書ノート: タリバン       アハメド・ラシッド著、坂井定雄・伊藤 力司 訳、講談社 2000年10月                               汐崎郁代(2016.8.30

2016年8月25日の新聞で、タリバンがアフガニスタンのアメリカ系大学を襲撃したというニュースを見た。タリバンの名前は21世紀初頭位まではよくマスコミに登場したが、最近はイスラム国を名乗る集団のニュースが多い。しかし、いずれもイスラムを旗印に掲げた過激な布教活動と見れば、根は同じかも知れない。
この本の著者はパキスタンのジャーナリスト。英・米放送局のレギュラー解説者を務めるなど、世界的にも知られており、今年6月にはJICA主催のセミナーでも講演している。本書はアフガニスタン紛争が勃発し、やがてほぼ終息する、2000年初めころまでの丁度21年間、著者が地道な取材と研究を積み重ねて執筆した報告書であり、そこでは、タリバンの本質が示されている。
 すなわち、物心つくか、つかないかの幼時から繰り返し教育され、戦うこと以外に自身の存在理由を見いだせなくなる過程で、あの勇猛果敢にして残虐な「イスラム戦士」が育って行く。教育というものの大切さと恐ろしさを思い知らされる気がした。
 同時に、周知のこととは思うが、中東地域の紛争が、米・ロシアを中心とする各国の政治・経済的思惑によって油を注がれ、利用されて来た経緯や、麻薬密売ルートの闇についても書かれており、アフガン人に焦点を合わせながら克明に検証されていて大変興味深い。以上の理由で、ここにご紹介させて頂く。

参考図書:
 1)「マスード 伝説のアフガン司令官の素顔」マルセラ・グラッド著、アニカ編集部訳
   この本はイスラム教徒の理解、偏見の払拭に役立つかも知れない。イスラム教徒と云えども普通の人間であり、特に主人公及びそれをとりまく人々の心優しさ・   真摯さを客観的に伝える好著と思う。マスードの人柄に惚れ込み、紛争中の17年間も行動を共にした報道写真家の長倉洋海も、インタビューに応じ、また多くの   写真を提供している。
 2)「イスラム教入門」中村廣治郎 著、岩波新書
   「入門」とは云え素人には可成り手強いが、1つ挙げれば、キリストはイスラム教の予言者の一人であること、従ってキリスト教はイスラムの1宗派として始まった   ことも書かれている




私の推薦する1冊の本                                    福田信一郎(2016.03.03)
日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた 

著者:嶌 信彦(ジャーナリスト、元毎日新聞、日本ウズベキスタン協会会長)  角川書店発行 1600円(税別)   

日本が敗戦後満州にいた日本軍将兵約57万5千人がソ連の捕虜となりシベリアへ抑留され、そのうち約5万人が更に中央アジアやモンゴルなどへ送られた。彼らは極寒の地で過酷な強制労働に従事させられ約5万5千人が死亡した。
本書はシベリア鉄道で中央アジアのウズベキスタンの首都タシケントに送られた捕虜たちが、シベリア抑留の悲劇とは違ったソ連での抑留生活、即ちオペラ劇場建設に従事した抑留者たちの奇跡の物語である。
当時、ソ連は文化面や宇宙開発などで欧米に「追い付け追いこせ」をモットーにソ連の各共和国に1か所オペラ劇場建設の計画を立てた。タシケントのオペラ劇場の建設のために送られてきた将兵は満州の旧陸軍航空部隊の永田行夫大尉を隊長とする457名の工兵で、元大工、電気工、とび職等技能者や技術者達であった。
彼らは旧ソ連の4大オペラハウスの1つとなるビザンチン式様式の(ナボイ劇場を2年後のロシア革命30年に当たる1947年10月に完成させるために、厳しい収容生活に有りながら「後世に日本の恥となる劇場は作らない。その上で全員が元気で帰国する」ことを使命として若干24歳の永田隊長の統率の元、日本人の技術、勤勉、団結力を発揮し懸命に働き完成させた。またソ連側の収容所長の人間性、市民や現場の親方たちとの心温まる交流、地元女性との悲恋等多くの逸話が描かれている。
1966年タシケント襲った直下型地震にもびくともしなかったことから日本の技術の優秀さがさらに高く評価された。当時の抑留者からの面談や現地調査を基にした物語は読者を感動させ、かつ日本の評価を高めてくれた大先輩に感謝の念が禁じ得ない。
福田は2001年初めからタシケントに赴任した。赴任早々以前から評判を聞いていたナボイ劇場を訪れた。そこで会った年輩の方がこんな話をしてくれた。当時建設現場を息子に見学させていた母親は「坊や、大きくなったら、この日本人のように勤勉な人になるんだよ」と諭したと言う。その後赴任、出張等約10年間ウズベキスタンに関わってきた。福田が最初にタシケントの土を踏んだ時から、日本人である自分は他のどこの国でも経験したことのない地元の人たちの温かみや親切さ、尊敬のまなざしを感じ気持ちよく仕事や生活が出来、かつ成果を出すことが出来た。これはナボイ劇場に従事した先輩たちが困難な仕事を通じ得られた日本人に対する高い評価のお蔭だと常に感謝している。
                                
                               

                                                                      


日本 (株)日鉄ヒューマンデベロップメント 学生社 1996.09.20第4版8刷 現在は、第10版                     会員  大平 一昭
もともとは、海外出張する新日本製鉄の従業員の為に執筆・編集されたものであるが、外国人と接書kする機会の多い人に広く読まれている。
日本の地理・歴史、政治、経済、企業経営、社会、科学技術、文化について、外国人に説明することを意識して記述されている。右ページに日本語、左ページに対応する英語の記述がある。
日本企業における意思決定手段の「稟議制度」にも説明している。
奥様同伴で接待を受けた時など、日本の文化、例えば能、生け花、茶の湯がトッピクスとなった時にどこまで英語で説明できるか? その様な時にこの本が役立つ。私の持っている本は4版だが、現在は10版が発行されている。


メス化する自然 デボラ・キャドバリー  訳:古草秀子、監修:横浜市立大学教授井口康泉 1998 鰹W英社発行)
                                         会員 水処理専門家 工藤 眞也

リー川の魚が何度検査しても、オスがまるでメスのようにふるまっている、要するに、通常なら精子を生産するはずのオスが、あたかも卵巣を持ち卵黄を生産しなければならないメスのごとく、生理学的に完璧な変化を遂げていたのだ。つまりオスが性を変化させていたのだ。これはイギリスBBCテレビの科学番組を長年プロデュースしている敏腕サイエンスジャーナリストの執筆本の一節である。 デボラ・キャドバリー女史は、下水処理場からの放流水中の汚染物質が原因とも記載している。当然のことながら日本の河川も同様な状況にあることを認識しなければならない。又女史は次の様な恐ろしい事も記述している。「現在、人間の精子の数の劇的な現象が報告されている。デンマークの研究によれば過去50年間に半減し、英国のエジンバラの研究では過去25年に25%の減少が報告されている」と云う。 1998年の執筆であるが、当時驚愕に震えて読んだ事を思い出す。
 あれから17年経過しているが、我々が飲んでいる飲料水の河川水は、当時とそれぼど変わらない処理技術を採用しているいが、国によっては環境ホルモン生成を配慮し塩素滅菌からオゾン処理に切り替えているところも見かける。但し、河川中の汚染物質だけが原因ではなく、様々な要員が報告されていると記載されている。
 この本は研究論文では無いので比較的専門外の方にも読みやすいと思うので、興味ある方は是非一読されることをお勧めする。

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